「夢のアリーナ」とは?Bリーグ新設アリーナ基準を調べてみた

2026年からの新Bリーグ・新B1が始動

現在、日本のプロバスケットボールリーグであるBリーグに所属しているチームの多くの地域には、新しいアリーナを建設することが求められています。

Bリーグが大きく飛躍するための戦略として、2026年からリーグを再編することが公表されております。

その中で、新しいリーグの最上位カテゴリにあたる「新B1」に加入するには、以下の3点を満たす必要があるとされております。

  • 入場者数:平均4000名以上
  • 売上高:12億円以上
  • アリーナ:新設アリーナ基準充足

逆に言えば、この3点を満たせばチームの強さ・成績に関係なく新B1に加入できるとされております。

新B1を満たすアリーナとは

今回は上記のうち、「アリーナ」に焦点を当てて調査をしてまいりたいと思います。

Bリーグは2026年からの制度についてティザーサイトを公開しております。
(と言っても、そんなに情報は多くはないですけど。)

新設アリーナ基準では、ハード面(スイートルームなど)、ソフト面(試合日設定など)の両方において、現行基準にない項目が設けられます。

【公式】REGULATION | 2026 NEW B.LEAGUE ― 将来構想特設サイト

この中でアリーナに関する審査基準は以下の2点となっております。

  • 2028-29シーズンまでに新設アリーナ基準を充足したアリーナの利用
  • 対象シーズン2年前にカーディング設定可能な109日の確保

上記のうち後者、カーディングに関しては書いてある通りで、2年前からアリーナの開催の確保ができるよということです。「Bリーグが優先的に使える・自由に使える」と置き換えても大きな違和感はないと思います。

いくら立派なアリーナができたとしても、「コンサート優先でBリーグではなかなか使えない」となっては意味がありませんから。

次に、前者の「新設アリーナ基準を充足」という部分の説明に入ります。これがこの記事のメインです。

これに関しては先ほどのティザーサイトには詳細な説明はありませんでした。

しかし、2021-22シーズンにおけるBリーグの「ホームアリーナ検査要項」には、現行B1のアリーナ基準に加えて、新設B1に関する基準が掲載されています。

ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕

この記事では、この基準がほとんどそのまま新設アリーナ基準になると考えて良いと解釈したうえで、新設アリーナ基準について説明していきます。

なお、こちらの基準はとても細かく、全てを追うことは難しいです。

なので、この記事では

  • 「観客が享受するもの」
  • 「現行のB1にない基準で、新設B1にある基準」

上記2点を中心に解説していきたいと思います。

なお、これらの条件はアリーナの「新設」だけでなく「改修」を以って満たしても良いそうです。

新設アリーナ基準のポイント

座席数:必須は5000席以上

まずは座席数ですね。こちらは5000席以上と現行のB1と大きな変化はありませんが、いちばん気になる点だと思いますので記載しておきます。

ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕

8000席以上で、オールスターや代表戦等の招致が優遇されるとのこと。

つまり「夢のアリーナは規模ではない」ということですね。こんど群馬県太田市に新設されるアリーナも収容人数は5000人ほどということなので、それくらいあれば十分だろうということでしょう。

私も、大きすぎると扱いに困るケースも増えるだろうと思いますので全てのアリーナが1万人規模である必要がないというのは賛同します。

ちなみに、ゼビオアリーナ仙台は本来は4000人のキャパだったらしいのですが、B1に合わせるべく、5000席に増席したらしいです。実際ゼビオのサイトではバスケット開催時のキャパは約5000席になっておりました。

座席はすべて独立し、背もたれが付いている

ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕
ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕

次は座席の仕様に関する要件ですね。

すべて独立した席で、番号をふることができる。つまり「全席指定」が可能だということです。

加えてすべての座席に背もたれをつけることが要件化されています。

現行のBリーグだと背もたれのない席がある会場もありますし、長椅子を区切ったような座席もありますが、そういったのはNGになるということですね。

来賓・貴賓席、スイート、VIPラウンジがある

ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕
ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕

多くのアリーナにおいては、ここが新設される場所となります。

来賓・貴賓・VIPのためのスイート席やラウンジです。貴賓席は入り口から、スイート・ラウンジは通路から一般の席とは別のものを用意することになっています。

私も含めて「Bリーグの新アリーナは、よくVIPの話をするよね」と思っている方は多いと思います。

おそらくVIP席の有無は、スポンサーの獲得に影響するのだろうと思います。

沖縄アリーナの記事でも少し触れましたが、プロスポーツにスポンサーするような会社の役員の中には、有名な方もいますので、広報担当が役員を会場へ連れてくる際に、座る席は特別感がある方が望まれます。

また、プロスポーツへのスポンサードを通じて会社同士での繋がりを増やし事業拡大に結び付けたい方もおります。
プロスポーツがある種の社交の場となれば、スポンサーもしやすいですし、非スポンサーの会社の方も誘いやすく、その誘われた方が次のスポンサーになる…といった可能性もあります。

ちなみに日テレはCMスポンサー企業と東京ドームのスイートラウンジで巨人戦を観ながら会食をすることもあるらしいです。

そういった方たちへの「特別感の醸成」「社交の場の提供」を通じてスポンサー獲得を促進していくことがBリーグ全体の狙いなのかなと推測しています。

常設および臨時の飲食販売設備がある

ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕

次は飲食です。

スタジアム・アリーナのグルメ・お酒が好きな私としては、ここはぜひとも充実させてほしいところです

注目すべき点は飲食物販売を行う売店施設が「常設施設としてある」ということでしょうか。
多くのBリーグ会場ではすべて仮設の売り場だけで販売されていることを踏まえると、公共施設でいちばんハードルが高いのはここかもしれませんね。

個人的にはすべてのBリーグ会場にビールサーバーが常設され、生ビールが飲めるようになることを願っています。売り子さんもいてくれたら最高です。

洋式トイレ80%以上

ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕

トイレ、大事ですよね。

バスケットは観客がトイレに行く時間が限定されていることもあり、Bリーグ会場のトイレは軒並み激混みする印象です。
それが緩和されればよいなと思います。

手荷物一時預かり所の設置

ホームアリーナ検査要項 〔2021-22シーズン用〕

最後は荷物を預けるクロークの設置です。

競馬場にはクロークがあるんですよね。野球場ではあまり馴染みはありません。

自分もそうですけど、遠征時など大きな荷物を持って座席に座ったりすると隣の人にも迷惑がかからないとは言い切れないんですよね。
(そうならないように配慮しているつもりではありますが…)

なので、こういった施設・サービスがあると有難いですね。個人的にはコインロッカーでも構いませんが。

まとめ

高いハードルを越えてゆけ

Bリーグの新設アリーナ基準を解説してきました。今回挙げたのは以下の項目です。

  • 座席数:必須は5000席以上
  • 来賓・貴賓席、スイート、VIPラウンジがある
  • 常設および臨時の飲食販売設備がある
  • 洋式トイレ80%以上
  • 手荷物一時預かり所の設置

これらを新設あるいは改修で満たすというのは決して低いハードルではないと思いますが、既存のB1チーム、これからB1を目指すチームにはぜひクリアしてほしいなと思います。

プロバスケットボールの人気を高めていくうえで、やっぱりアリーナ、ハコは大事だと思います。
はじめてプロの試合を観戦するとなったときに、着いた場所が「ザ・市民体育館」みたいな場所だとワクワクできないじゃないですか。

一方で期待と不安が入り混じった中で初めて観戦する場合でも、沖縄アリーナのような場所を目の当たりにし、足を踏み入れれば、自然と気持ちも高まってくると思います。

もっと「Bリーグはイケてる」「Bリーグは流行る」となるはずです。

ハード・ソフトの一体運営を

最後に、個人的にはこれらを満たせば「夢のアリーナができるか」と言われると、そうではないと思います。

「優れた建物」と「優れた運営」、その両方が「夢のアリーナ」を作ると思います。良い例が琉球ゴールデンキングスが運営する沖縄アリーナです。

いわゆる「ハード・ソフトの一体運営」ですね。

各チームが運営主体となって、アリーナの設計から日々の運用まで、「プロスポーツの興行」として改善・改良を積み重ねていくべきだと思います。