この記事の要点
- ソフトバンクがワクチンパスポート導入実験
- ワクチンパスポートの導入は進む方向性
- プロスポーツにおけるワクチンパスポート導入の課題と疑問点
ソフトバンクがワクチンパスポート導入実験
プロ野球の福岡ソフトバンクホークスは、9月2日から4日まで、PayPayドームで行われる主催試合は無観客で行うことになっておりましたが、
- 2回のワクチン接種を済ませた人
- 1週間以内のPCR検査で陰性である
上記いずれかの条件を満たす観客は入場可能とする、いわゆる「ワクチンパスポート」の導入を行います。
「ワクチンパスポート」(ワクチン接種証明書の利用)は現在は海外渡航時に利用されておりますが、これを国内でも利用することで「感染拡大対策」と「経済活動」「文化的活動」の両立を目指していこうという動きです。
国内のプロスポーツにおいてワクチン接種などを条件に観客を入れるのは初ではないか、とのことです。
※以下、ワクチン接種証明書の利用・提示を「ワクチンパスポート」と記載いたします。
この件に関する最初の感想
ソフトバンクらしいなと思いました
まず最初の感想としては「ソフトバンクらしいな」と思いました。
野球チームとしてはもちろん、こういう施策をいちはやく導入できるフットワークの軽さも、プロ野球チーム・プロ野球運営企業としてのソフトバンクホークスに表れているのかなと思いました。
また、親会社に関しても同様で、いち早い職域接種の導入や、自社施設でのPCR検査を実施など、新型コロナウイルスに関する多くの施策をスピーディーに取り組んでおり、そんなソフトバンクグループのイズム、孫正義イズムとでも言いましょうか。
さらに、この施策の裏側には、PayPayドームでホークスのファンクラブを対象としたワクチンの職域接種を実施しているということもあるでしょう。
そのような観点からこのニュースに関して「ソフトバンクらしいな」と思いました。
無観客試合で実験するのは妥当性が高い
ソフトバンクホークスは12球団で唯一、緊急事態宣言が発出されると無観客試合に切り替えるチームです。
(それもソフトバンクらしいなと思いますが)
その無観客試合で、ワクチンパスポートの実験を行うのは妥当性が高いなと思います。
後述もしていますが、有観客試合でこの取り組みを導入するのは相当ハードルが高いですから。
ロッテ戦でも導入されたらぜひ行ってみたい
PayPayドームで開催されるホークスの主催試合、9月4日の次は9月14日のロッテ戦です。
福岡県の緊急事態宣言の期限は9月12日ですので、そこで宣言が解除されれば有観客に戻るでしょうが、そうでなければ9月14日も無観客になると思われます。
その際にもワクチンパスポートが実施されるのであれば、少し行ってみたいなと思いました。
(時勢を読むことと、行くのであれば感染対策を取ることは当然ですが。)
ワクチンパスポートの導入は進む方向性
続いては本日の毎日新聞の記事です。
政府の有識者会議「新型コロナウイルス感染症対策分科会」(尾身茂会長)が検討してきた、新型コロナのワクチンを2回接種した人の移動や行動に関する制限緩和の提言案が判明した。
接種歴もしくは陰性の検査結果を提示すれば、「人に感染させるリスクが低い」として大規模イベントや会食への参加を容認する内容が含まれる。
政府の有識者会議「新型コロナウイルス感染症対策分科会」(尾身茂会長)が検討してきた、新型コロナのワクチンを2回接種した…
ワクチンを2回接種した人への移動・行動制限の緩和は経済界を中心に強い要望があり、政府の有識者会議でも議論され始めているそうです。
有識者会議内でも世間的にもこの案は賛否両論ではあり、現実的に導入できるかもわかりません。
しかしながら、いわゆる「出口戦略」としてこのワクチンパスポートの導入が検討対象になることは自然であるのかなとは思います。
プロスポーツにおけるワクチンパスポート導入の課題と疑問点
前提として、誰でも望めばワクチン接種できる状況にならないといけない
私が住んでいる自治体もそうですが、ワクチンの予約はなかなか取れないものです。
その中でワクチン接種者を優遇する(非接種者を冷遇する)施策というのは受け入れられないのではないかと思います。
私自身、ワクチンパスポートの導入に関しても「私がワクチンを打ち終わったから」、ある程度歓迎するようになったこともあり、やはりワクチンの接種体制が落ち着いてから導入されるものなのかなと思います。
いじめ・差別につながる可能性がある
これはプロスポーツに限らずですが、ワクチン接種した / しないを起点として、職場や学校等におけるいじめ・差別を助長する可能性があります。
プロ野球などのイベントに参加できる・できない、飲食店に入店できる・できない、といった属性が新たに加わってしまいますので、「飲食店に入れない人が職場に来るんですか?」という認識を生む可能性は否定できません。
1人でも多くの方がワクチンを接種することが望ましいですが、それでもワクチンの接種は「個人の自由意思」に基づくものであるべきです。
上記の観点から、ワクチンの接種者 / 非接種者で取り扱いを変える「ワクチンパスポート」自体、日本国内では普及しない可能性があります。
証明書自体が不正の温床になる可能性がある
アメリカのハワイ州ではワクチン証明書を偽造したという事案がありました。
他にもワクチン証明書を偽造し販売していた事例がいう欧州・米国で散見されているそうです。
日本国内でワクチンパスポートが導入されることで、証明書の偽造や個人間での「貸し借り」が行われる可能性があります。
今はシールが貼ってある紙切れ1枚ですから、貸し借りは起こりそうだなぁ…なんて個人的には思います。
現場のオペレーションが耐えられるか
今のプロスポーツでは入場時に
- 検温
- 手荷物検査
- チケット確認
というフローを踏んで入場します。
検温が増えて入場時の列が延びつつある中で、「ワクチン接種証明書の確認」が加わることで更なる混乱・行列を招く可能性があります。
行列は密を生みやすいということもありますし、ワクチン接種証明書を忘れた・失くした・持っていないなどの場合でトラブルが起こる可能性も想定できます。
スポーツ観戦の安全性は検証されているのか
最後は課題というよりは、個人的な疑問点になります。
そもそも1年以上に渡るプロスポーツの興行において、観客にクラスターが発生した事象は確認されていなかったはずです。
- 大声を出しての応援の禁止
- 1席以上空けての観戦
- (場合によっては)アルコールの販売停止
という対策を講じている中で、新たにワクチン接種証明書の必要性があるのか。
エンターテインメントの興行に関しては、科学的な検証が不足している印象を受けます。
昨年、横浜スタジアムでは観客数を80%~100%にする実証実験も行われました。
非常に画期的な取り組みであった一方で、この結果もプロスポーツや日本社会にフィードバックされた実感が薄いとも感じます。
- スポーツ観戦自体が安全 / 安全ではない
- 観客動員数を半分にすれば安全 / 安全ではない
- アルコールの提供は安全 / 安全ではない
- 観戦の往来での立ち寄りが危険 / 危険ではない
もちろん社会情勢や医療体制にも影響を受けるために、どれも曖昧にはなりますが、客観的に議論されている過程をあまり見かけません。
個々の施策が「何を目的に導入されているのか、されるべきか。」スポーツチームもそうですが、それ以前に、行政側が明確な指針を国民・市民に提示してほしいなと思いました。